「離婚」はじめに

最新のデータによると、「結婚をしても、相手に満足、もしくは納得できないときは離婚をしてもよい」と離婚を容認する人々が過半数を超えて、とりわけ婚姻年数の浅い若年夫婦と婚姻年数が30年を超える熟年夫婦の離婚率が急増しています。

また、未就学児を持つ専業主婦、共働き夫婦のかなりの人々が子育てに自信を持てなくなっている現状があります。

そして、近年、急速に増加を示している、児童虐待についても、その主な要因は、経済困難の他に、地域、友人、親兄弟からの孤立が目立っています。

このような状況の中で、子育て中の若年夫婦が、どのようにすれば幸福な家庭を築くことができるのか。

また、夫婦間に危機が生じたときは、夫婦関係をどのように修復すれば離婚を回避することができるのか。

やむを得ず離婚をする場合に、夫婦、親子にどのような影響をもたらすかなど、不安を抱えているご夫婦も急増しています。

特に、子どもがいる夫婦の離婚では、日常生活や心情に、どのような変化が起きているのか、今後の子どもの成長にどう影響するのか。

実際に、子どもに影響がみられたときは、どう対処するべきか、子連れ再婚における留意点など、多くの疑問が出てきます。

このような状況のなかで、夜泣き、夜尿、腰痛、不登校、ひきこもり、いじめなどの問題が発生しますが、当初は、子どもの問題と考えていたことが、実は、夫婦の不和、不信感や親の心の在り方に原因がみられるのですが、そのことに気づけないまま、子どもに当たり、躾のつもりが、虐待になることもあります。

このような夫婦間の心の葛藤や、不適切な子育てによる親子間の歪みは様々ですが、早めにカウンセリングを受けることで回避できることも沢山あります。

1.夫婦の離婚と子どもの心理

離婚を刷る場合、子どもには、なるべく離婚の影響を与えないように親が配慮します。

しかし、現実には、親権者、養育費、財産分与などの課題を解決し、急速に変化する生活に対応するため、子どもに十分な配慮ができなくなります。

親権を争って、子どもを巻き込んだり、養育費を払わないならば、面会を拒否するなど、離婚を進めてゆくうちに、子どもの心理面に配慮ができないケースが多く見られます。

親の離婚は、子どもにとって、障害におけるもっとも深刻な事態です。

子どもは身の回りの人との関係や周りの出来事を、取り込んで成長してゆきます。

子どもから見れば、大切な両親の離婚という争いによって、どちらかの親と別れねばなりませんし、兄弟姉妹と別れることもあります。

場合によって、転校も必要となり、生活レベルも生活環境も変わらざるをえなくなります。

子どもが両親から離婚を告げられたとき、片方の親と家を出る時、または、片方の親が自分を置いて出て行ったとき、子どもの悲しみという心理は想像がつきません。

子どもにとって、離婚と家庭の破壊が現実になったとき、子どもの心には、悲しみ、不安、心配、怒り、恨み、憎しみ等、さまざまな多種多様の感情がわきおこります。

その結果として、整理のつかない、あるいは対処しきれない感情が、子どもの気持ちの深いところに傷を残すことになります。

子どもが自分自身のせいで、自分が良い子でいないから、離婚をしたのではないかという、責め心を持たないように、両親が十分注意が必要です。

<事例>

中学時代から、両親の不和に心を痛めていたB子の例では、周囲からもうらやまれるほど幸せだった家庭が、突如として、B子の中学時代に、家庭は危機的状況になり、いつ両親が離婚しても、不思議ではない状態でした。

B子は、何とか両親に仲直りをして欲しいと思い、中学、高校時代は勉学に励みました。

良い成績を取ると、両親は喜び、授業参観にも夫婦で来てくれました。

そのことで仲直りをしてもらえたら、と優等生を続けました。

しかし、結果として、両親は離婚を選択しました。

その時、B子は、両親を繋ぎ止めることができなかった自分の力の無さ、無力感、挫折感がなにより辛かったことを語っています。

どんなに子どもが両親の仲直りを望んでいたとしても、子どもの力では、どうしようもないこともあるのです。

離婚は大人の事情であって、B子の無力のせいでないことを、B子はカウンセリングを通じて、気づくことができました。

2.離婚の是非について

離婚に「バツイチ」と言われるように、結婚の破錠、人生における汚点と言われることも多く、夫婦間だけの場合は、人生は再出発すれば良いと考え、離婚の決心が比較的簡単であるが、子どもがいる場合は、離婚によって、子どもを不幸にしてしまうとの考えから、離婚の決心をすることは困難と思われます。

では、離婚は、本当に子どもを不幸にするのでしょうか?

実際は、両親が不仲で争いが多く、絶えず緊張した家庭状態の中で、親の顔色を伺いながら、ビクビクして不安定な生活を強いられることのほうが、子どもの発達には悪い影響を及ぼします。

子どものいる離婚は、夫婦は別れて他人となっても、親子の縁は切れませんから、父親、母親として、離婚後も、上手に付き合ってゆく必要があります。

3.離婚における気持ちの切り替えと感情の整理

離婚は、どんなに冷静に考え、自分で決めたことでも、相手に対して、怒りや恨みの感情は出てきます。

自分自身に対しても、挫折感、絶望感、被害感、孤独感を抱き、別れることに寂しさや悲しみも感じます。

離婚は、一度は信じていた夫婦が別れ、共に築いてきた家庭が壊れ、配偶者や家庭を失ってしまうことです。

喪失体験には、必ず怒りや絶望感、悲しみなどの感情が出てきます。

それは、人としてまったく自然のことなのです。

ただ、その環状があまりにも激しくて、自分でもコントロールが出来ず、日常生活に支障をきたすときは、感情を素直に話すことで、楽な気持ちになることが可能なので、カウンセリングを積極的に受けることをお勧めします。

大切な事は、ひとりで頑張りすぎないことです。

<事例>

A子は結婚10年になりますが、ある日、夫から突然離婚を告げられました。A子はショックで、家事も何もできない状況です。

年上であるA子は、家庭を仕切り、無口な夫を一方的に支配してきました。その夫は、A子に離婚をすることを告げ、家を出てゆきました。A子はうつ病になり、自殺を考えるようになりました。子どもにも、それぞれ問題が発生し、母親のことが心配で不登校にもなりました。

結局、A子は、心療内科での治療としてカウンセリングを受けるようになり、人間として大きく成長できるようになりました。

カウンセリングを通じて、これからの生き方や自分自身の問題に気づくことができ、結果として、離婚調停で話しあうことができるようになりました。言うまでもなく、A子が明るく元気になったことで、子供たちも安定するようになりました。

4.共依存と離婚 離婚したいの?それとも離婚したくないの?

皆様は「共依存」という言葉をご存知でしょうか?時々、悲愴な感じで裁判所に「離婚の申し立て」をしにくるかたがいます。よくよく話を聴いてみると、夫の「暴力」が理由で、離婚の申し立てをしたいといって、手続きをしてゆきます。

第一回の調停が始まって、今まで、長年に渡っての言葉の暴力、身体的暴力をどのくらい受けてきたかについて長々と話をします。(過去の悲しい記憶について)

調停委員として、涙ながらに訴えるクライアントの話に共感して、離婚後の人生についての条件として、慰謝料や、調停で成立しない場合の訴訟の手続きや、今後の展開について説明していると、急に、夫も昔は優しかったとか、本当はいい人だとか、暴力を奮っている夫を肯定する話を始めます。

はじめは、こちら側も、この人、何を言っているんだろう、と思いますが実は、これが「共依存」です。

「共依存」とは、暴力をうけている女性が、外からみると被害者のように見えるのですが、実はこの女性も、夫にはわたしがいないと生きていけない、と思い込み、夫に依存している状態です。

きつい言い方になりますが、この女性は自立ということを考えたことがなかったのでしょう。生育歴や発達において問題があったのかもしれません。

もっとわかりやすく言えば、自己肯定感やセルフイメージが低いということで、自分を大切にする、ということを知らなかったのです。

本当に夫婦間暴力に関しては、外から見るとひどい暴力やケガを負わされているのに、たいしたことではないと言います。

アルコール依存症や、ギャンブル依存などを、夫に持つ妻たちも、共通の部分があります。これらの女性たちに共通している点は、家系的に父親や祖父など、先祖代々にわたり、暴力であれば、暴力の連鎖を見てきて育っているという点です。自分自身が幼少期に育つ時点で、父親の暴力を受けるか、または、見ながら成長しているので、暴力が普通のことになっています。

そして、不思議なことに、幼少期にあれほど苦しんだ「暴力」を振るう男性と結婚をすることも多いのも共依存の特徴です。

この種の事件には、非常にかわいそうですが、結局、元の夫のところに戻ってゆくケースが多いのも事実です。

「暴力」を否定して、心身ともに自立した女性を目指してほしいと思います。このようなケースの場合、辛い作業になるかもしれませんが、精神分析的心理療法というカウンセリングの方法で、思春期、青年期から児童期、幼年期、乳児期へと「過去の自分」と向きあってゆく作業をすることで、今よりもずぅ〜と、生きやすく、前向き、肯定的な人生を送ることができるようになれると思います。

是非、カウンセリングを受けることをお勧めします。

5.離婚と親権者の指定

離婚については、合意はしているが、どちらが親権者になるかということについては、意見が対立したままでまとまらない、という場合もあります。
夫も妻も、親権者になりたいと主張して譲らないケースが非常に多くなりました。
これも少子化の影響かもしれません。

いずれにしても、親権者を決定しないと離婚はできません。
離婚届には、親権者の名前を書く欄があり、書かれていないと、離婚届は受理されません。
話し合いで決着がつかないときは、親権者の指定を家庭裁判所に申し立てることが出来ます。

家庭裁判所には、調停と審判という、ふたつの手続きがあります。
親権者指定や、離婚後の親権者変更についての調停は、調停委員会が当事者双方の話を聞き、調停実行委員会の意見を加味しながら、合意を斡旋します。

調停で、どうしても折り合いがつかないといったような場合、審判という手続きになり、家庭裁判所が決定をします。
親権者指定についても、変更にしても、子どもにとって、最善の途を選ぶというのが、家庭裁判所の姿勢です。

6.離婚における親権と監護権

「親権」とは、子どもを育ててゆく権利と義務のことであり、親権者とは、社会の中で、子どもを一人前に育ててゆく責任者です。

もちろん、親権とは、子どもが未成年者であるときに限られるものです。
子育ては大変ですが、原則として、親権を放棄することはできません。

一方「監護権」とは、監護教育をする権利、つまり、日常的に子どもの面倒をみる権利です。
だから、本来は、親権の中心的な部分を占めるものです。
監護権だけを取り出して、云々するのは奇異に聞こえるかも知れません。

しかし、実際には、監護権者と親権者を別にするというケースもあります。
たとえば、父母が親権をめぐって対立しているとき、子どもを引きとって育てていと強く願う母が親権にはこだわらない場合、父を親権者に母を監護権者に決めることです。

こうすると、母が日常的に子育てをすることになるが、子どもの財産管理であるとか、子どもの戸籍のことであるとか、あるいは進学の手続きなどは、父がするということになります。

また、親権者については、戸籍記載されますが、監護権者については記載されません。
そういう意味からも、このような分担を考える場合は、ぜひとも家庭裁判所の調停を利用するなどの方法を選択することがベストと思われます。

7.離婚における養育費の取り決め方法

養育費と言っても、父と母双方が話しあうことが大切です。
ただ、話しあって結論が出ても、単なる口約束や一筆書いてもらうという方法は、勧められません。

公証役場で公正文章にしておくか、家庭裁判所の調停を利用するのが、一番賢明なやり方です。
離婚訴訟の中で、決定されたのであれば、それはそれで十分です。

1.話し合い、公証役場で決める

離婚をするときには、誰が親権者になるかを決めねばならないことを、先程説明しましたが、この親権者の話し合いを並行して、養育費についても話し合いが必要です。

そして、ある程度話し合いがまとまれば、全額、支払い時期、支払期間、支払い方法など細かい点まで決める必要があります。
話し合いがまとまれば、書面にしますが、公正証書にすることが一番安心です。

2.家庭裁判所の調停(審判)で決める

養育費について、家庭裁判所を利用することも可能です。

離婚調停の申し立てをして、その調停の中で、養育費の取り決めをする場合もあります。もしくは、離婚届を提出してから、養育費請求の調停の申し立てをすることもできます。調停で成立すれば、確定判決と同じような力があるので、強制執行も可能です。調停での話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所では、審判で養育費を決めます。

3.家庭裁判所の裁判で決める

離婚を求める裁判(訴訟)において、併せて養育費を定めて欲しい旨の申し立てをして、離婚と同時に養育費についても判決の中で定めてもらうこともできます。
判決で、養育費について触れられているときは、改めて、養育費について調停(審判)を家庭裁判所に申し立てるのが良い方法です。

8.「面会と交流」

はじめに

離婚後、親権者でない親と子どもが会うことを面会交流と言います。
夫婦は離婚すれば、他人になります。
しかし、親子関係は、親が離婚しても縁は切れません。

親権者でなくても、同居して養育していなくても、かけがえのない父と母です。
子どもは親が離婚しても、それまでと同様に、父母に愛され、大切にされることが重要です。
かつては、離婚して、親権者でなくなった親は、子どもと会うことも交流もなく、縁が切れてしまうことが多かったのですが、最近は、離婚後別れてクラス親子が、その後も交流を続けることが多くなりました。

そして、離婚後に親権者や養育費などを決めるように、離婚後の親子の面会について話し合い、約束事として、取り決めをすることが多くなりました。
当事者同士の話し合いできめることができないときは、家庭裁判所の調停や審判で決めることができます。
面会は子どもの権利として重要です。

1.心の安心感

子どもは、別れた親と交流を続けることで愛情を確認し、不安や喪失感を解消し、安心して生きてゆけるのです。
対象喪失の中でも、依存していた親を失うことは、最も大きな喪失です。
離婚によって、ぽっかり空いてしまった穴を、少しでも埋めることが出来て、父親からも、母親からも、愛されている、大事にされているお感じることで、精神的に安心感を持つことができます。
そして、その安心感は地震や自己肯定感に繋がり、こどもの「生きる力」になります。

2.健全な人間関係を形成する

人間が生まれて、初めて出会う人が母親であり、父親であり、家庭は小さな社会です。
子どもは家庭生活の中で、父母の姿、行動、役割を見て、毎日少しずつ学んでゆきます。
まさしく、子どもにとって、将来の家庭のモデルになります。

離婚によって、片親だけになり、別れた親の影響をまったく受けることがなくなり、父性は母性に、母性は父性に替わることはできません。
このことが、将来の恋愛や結婚に大きな意味を持つことになります。
結果として、うるおいのある楽しい面会を続けることにより、子どもは両親からの愛情を確認することで、男性、または女性として成長することができます。

3.面会しないほうが良いケース

子どもにとって、面会と交流がプラスにならないケースがあります。
たとえば、同居中に別れた親から暴力や虐待を受けていた場合は、面会や交流は中止すべきと考えます。

また、子ども本人が、暴力を受けていないとしても、母親がひどい暴力を受けているのを見て育った場合は、その親に対する恐怖心や拒否感を抱いています。
これ以上、子どもを傷つけないためにも、面会は辞めたほうが良いでしょう。
また、子どもが会うことを拒否していたり、親に対する否定感があまりにも強い場合も止めるべきです。

一方、同居している親が否定的である場合は、親のほうが反省をして、態度を改めると、子どもは変わっていきます。
親の影響でもないのに、拒否しているときは、親が知らないところで傷ついていることがありますから、無理をしてはいけません。

9.不幸の連鎖にならないために、負の世代間連鎖を断つ

子供たちの回復力、成長力にはたくましいものがあります。
親の離婚により、様々な苦労と経験で、鍛えられて自立心の高い大人へと成長をしていく子供たちも大勢います。

親の離婚によって、子どもが多くの喪失体験を繰り返すと、やがて子どもが成長して大人になり、恋愛し結婚するときに、自信が持てなかったり、子どもを生み育てることに、躊躇する人も多いようです。
特に結婚については、愛しながらも、捨てられる恐怖に悩んだり、衝突したときに、うまく処理したお手本を見ていないために、自信を持つことができないと言われています。

しかし、親になってみて初めて、親の苦労を理解し、父や母に感謝し、親を再評価することも多々あります。
家庭内トラブルを、うまく処理できずに、夫婦別れしたとしても、離婚後において、父として、また母として、子供のためには協力を惜しまない姿を、子どもたちに見せていけば、子供たちにとっても、素晴らしいモデルとなり、過失のマイナスイメージを修正することができます。

親には、子、孫へと離婚の世代間連鎖が起こらないように、離婚したあとも、父として、母として、親子関係を大切に育ててゆくことが、重要なカギになると思います。

24時間土日祝日も対応します。

  • 仕事、家事で昼間時間がとれなくても受けられます
  • カウンセリングルーム、または仕事場のそばなどで
  • 電話/ショートメッセージでご利用いただけます

※ご相談のお客さまへの対応が遅れてしまいますので、業者の方はフォームからお問い合わせください。